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そのまま起こし（素起こし）とは

time 2025/06/24

「そのまま起こし（素起こし）」とは、音声データや会話の内容を、発言されたままの形で文字に書き起こす方法です。この手法では、話者の言い淀みや言葉の繰り返し、口ごもり、さらには「あのー」「えっと」といった意味を持たないつなぎ言葉まで、すべて省略せずに記録されます。つまり、話し言葉のリズムや癖までも忠実に反映されるのが特徴です。

文章としての読みやすさよりも、会話の実態を正確に再現することが最優先されるため、文法の整合性がとれていない箇所や、意味の曖昧な表現もそのまま残されます。聞き手にとっては一見すると読みにくい形式ですが、話し手の思考の流れや言葉の選び方などを細部まで記録できる点に大きな価値があります。

このような素起こしは、会話分析や言語学の研究において特に重宝されます。発話の構造ややり取りのタイミングを正確にとらえる必要があるため、加工されていないデータが求められるのです。また、警察の取り調べ記録や裁判での証言記録、研究インタビューなど、発言内容の正確性が求められる場面でも頻繁に用いられます。

一方で、素起こしはそのままでは読みづらいため、公開資料や報告書に使うには適さない場合があります。そのため、素起こしを下地として、不要な語句を取り除く「ケバ取り」や、文章として読みやすく整える「整文」へと発展させる工程が、後に続くことも少なくありません。

「そのまま起こし」は、まさに音声情報を“生”のまま書き留める作業であり、情報の客観性と正確性を最重視する記録手法と言えるでしょう。